落葉の展覧会

ムソルグスキーのピアノを口づさみ
プロムナードを巡るとき
路上に散らばった落葉の絵らの
なんと奇跡の芸術か
何者の手になる色合いか
葉っぱの画布に水彩絵の具を
にじませて
重ねの色のグラデーション
一葉ずつの作品をめでながら
歩く愉しみ


虫喰いの穴にしても
枯れた寂の具合にしても
それがあるから完成された
天工の才能
ぼくらは秋に
絵を踏まないように
そぞろに歩く


点景

夢とも現ともしれない
一点のトリミングされた画像が
いつまでもぼくのファイルの引き出しに
サムネイルとして残り続けている
あれはどこだろう
傍にいたのは誰だろう
茶褐色に酸化したモノクロームの
日傘の婦人のほっそりとした夏姿


気になる印象がどんな大事な場面であったか
それはぼくの事件とも呼べる強烈な場面でなかったのか
別れとか死とか茫然自失とした虚ろな視点が
残像としてあり続けているのは
削除しても浮いてくるゴーストの
ただの影だろうか


一点だけが消えないで
残り続けて疑問を投げつける
それが解答だとばかり
問題から乖離してあるのは
不明な静止画像だけ
なにがあった?
その先に進めない心のカメラは
見せたくない見られたくない
深層からすでに埋め立てられ
その先はいつも通行止め


点はいつまでも点であり
線から面へと物語を繋げない
ぼくの生体の秘密がきっとあって
景色の一部分をヒントとして
ぼくの前に提出されている


動く

立ち止まるな
動くんだ
動かないと見えない視野
停まっていれば
そこから生まれないものがある


変化という言葉が好きだ
変転し移ろうもの
走るもの 流れるもの
飛ぶもの 別れるもの


なにかをしよう
ここでないどこかに行こう
回答はいくらでもある
ひとつよりないなんて
逃げ道はどうする


進んでゆこうと思う
引き返すのはまた同じ
もう引き留められない
これは道行なのだ